苫米地英人『201冊目で私が一番伝えたかったこと』- 洗脳社会から脱し、自由意志で最高の人生を手に入れる方法

本書『201冊目で私が一番伝えたかったこと』は、認知科学者である苫米地英人氏が200冊以上の著作を通して一貫して伝え続けてきた思想の集大成です。私たちは知らず知らずのうちに、親、教師、社会、メディアによって価値観を刷り込まれた「洗脳社会」に生きており、自分の意志で選択しているつもりが、実は他人の価値観に従って生きているに過ぎないと著者は指摘します。
この記事では、そんな「奴隷の人生」から脱却し、真の自由意志を獲得して豊かで充実した人生を送るための具体的な方法を、本書の内容に基づき、忙しいビジネスパーソasonsでも実践できるよう分かりやすく解説します。現状の外側にゴールを設定し、脳のメカニズムを巧みに利用して無意識レベルで自らを変革していく、科学的かつ強力な自己実現のテクニックが満載です。この記事を読めば、あなたを縛り付けていた見えない鎖の正体に気づき、未来を自らの手で創造していくための一歩を踏み出せるはずです。
本書の要点
- 私たちは「洗脳社会」で生きている: 私たちの行動や判断のほとんどは、幼少期に親や社会から刷り込まれた信念に基づくものであり、真の自由意志によるものではない。この洗脳から脱却することが、主体的な人生を歩む第一歩である。
- 現状の外側にゴールを設定する: 現状の延長線上にある達成可能な目標は、他人に設定された偽のゴールである可能性が高い。達成方法が見えなくても、心から「やりたい(want to)」と思える現状の外側のゴールを設定することで、脳の創造性が最大限に引き出される。
- コンフォートゾーンをずらし、ホメオスタシスを味方につける: 人間の脳は、慣れ親しんだ状態(コンフォートゾーン)を維持しようとする機能(ホメオスタシス)を持つ。この性質を利用し、「ゴールを達成した自分」を新たなコンフォートゾーンに設定することで、脳は無意識にあなたをゴールへと導き始める。
- アファメーションでブリーフシステムを書き換える: 「自分は〜である」という肯定的な自己宣言(アファメーション)を繰り返すことで、無意識の行動を司る信念体系(ブリーフシステム)を書き換え、セルフイメージを向上させることができる。これがゴール達成の強力な原動力となる。
- 最終ゴールは「自由意志」の獲得: お金や地位はあくまで手段であり、人生の最終ゴールは、あらゆる洗脳や束縛から解放された「自由意志」を獲得することである。そして、一つのゴールに留まらず、終わりなきゴールを更新し続けることで、人生はより豊かで刺激的なものになる。
あなたは本当に「自分の意志」で生きているか?
「いい学校に入って、一流企業に就職しなさい」
「安定しているから、公務員を目指しなさい」
こうした言葉を、親や教師から一度は言われた経験はないでしょうか。私たちは、自分の人生を自分の自由意志で選択していると信じていますが、著者の苫米地英人氏は、その考えに警鐘を鳴らします。
実は、私たちの下す判断や選択のほとんどは、子供の頃に親や教師、社会、メディアによって刷り込まれた 「信念」という名の偏見 に基づいているのです。著者 は、こうした社会を「洗脳社会」と呼び、多くの人が自由意志で行動しているつもりでも、実際には他者から埋め込まれた記憶によってコントロールされた「奴隷の人生」を送っていると指摘します。
苫米地氏はこれまでに200冊以上の本を執筆し、その内容は認知科学から政治経済論まで多岐にわたりますが、そのすべてに共通するメッセージがあります。それは、「すべての人間に、自由意志を持って主体的にゴールを設定し、豊かで充実した人生を歩んでほしい」 という願いです。
本書『201冊目で私が一番伝えたかったこと』は、まさにその思想の集大成であり、私たちが洗脳から逃れ、本当の自分を生きるための具体的な方法論が詰まった一冊と言えるでしょう。
なぜゴール設定が人生を劇的に変えるのか?
もし、あなたが今の仕事や生活に漠然とした不満や不安を抱いているなら、それは人生における「ゴール」を求めているサインかもしれません。著者は、ゴールに向かって邁進する人生こそが、生きている充足感に満ち溢れた、ワクワクして楽しいものだと断言します。
では、どのようにゴールを設定すればよいのでしょうか。ここで重要なのが、「現状の外にゴールを設定する」 ということです。
現状の延長線上にあるゴールは「偽物」
多くの人が設定しがちな「今の会社で出世して社長になる」といった目標は、著者に言わせれば「現状の中にあるゴール」です。それは過去の延長線上にある未来であり、大きな変化は期待できません。むしろ、それは他人から「そうあるべきだ」と仕向けられた “偽のゴール” である可能性が高いのです。
本当にあなたの人生を輝かせるのは、現状からは達成方法が見当もつかないような、かけ離れたゴールです。「世の中の役に立つ仕事をしている自分」といった漠然としたものでも構いません。むしろ、輪郭がはっきりしすぎているゴールは、誰かの価値観を借りてきた偽物であると疑うべきです。
現状の外にあるゴールは、原理上、最初はぼん- やりとしか見えません。心理的な盲点である「スコトーマ」に隠れているからです。しかし、ゴールを設定し、そこに向かって歩み始めることで、スコトーマが外れ、今まで見えなかった道筋が次第に見えてくるのです。
「コンフォートゾーン」をずらし、脳を味方につける
ゴール達成の鍵を握るのが、「コンフォートゾーン」という概念です。これは、私たちが「一番楽でいられる、慣れ親しんだ領域」のこと。例えば、年収500万円の人は、年収500万円の状態がコンフォートゾーンになっています。
私たちの脳には 「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」 という働きがあり、コンフォートゾーンから外れると、無意識に元の状態に戻ろうとします。ダイエットがリバウンドしやすいのも、このホメオスタシスの力で「太っている状態」というコンフォートゾーンに引き戻されるからです。
この強力な力を、ゴール達成の味方につけるのです。
やり方はシンプルで、あなたのコンフォートゾーンを「ゴールを達成した未来」に設定し直すこと。
例えば、ゴールを「年収1億円を稼ぐ自分」に設定し、それが自分にとって当たり前の状態(コンフォートゾーン)だと脳に思い込ませるのです。すると、現状の年収(例えば500万円)がコンフォートゾーンから外れた「不快な状態」になります。その結果、ホメオスタシスが働き、脳は無意識に「不快」を解消し「快適」なゴール側の状態に戻ろうと、1億円を稼ぐための方法を勝手に探し始めるのです。
これが、努力や根性論ではなく、脳の仕組みを利用した科学的なゴール達成法です。
仕事のモチベーションが上がらない根本原因と処方箋
「仕事が楽しくない」「月曜日が憂鬱だ」
多くのビジネスパーソンが抱えるこの悩みも、ゴール設定の観点から解決できます。
著者は、やりたくない仕事を「~ねばならない(have to)」という意識で続けることを「奴隷の人生」と呼びます。have to
の仕事は、あなたのエフィカシー(ゴール達成能力の自己評価)を下げ、脳は仕事をしないための言い訳を創造的に探し始めます(クリエイティブ・アヴォイダンス)。
では、どうすればいいのか。
答えは、すべての行動基準を「~したいからやっている(want to)」に転換することです。
真のゴールとは、want to
のゴールでなければなりません。「お金のため」ではなく、「心から楽しいと思えるかどうか」を基準に仕事を選ぶのです。want to
の意識は、脳に爆発的な創造力を生み出し、あなたをゴールへと駆り立てます。
「やりたいことだけでは食べていけない」という声が聞こえてきそうですが、それこそがまさに「洗脳」です。著者は、お金は目的ではなく、want to
を追求した結果として後からついてくる手段に過ぎないと断言します。
あなたの周りにいるドリームキラーに注意
あなたがwant to
のゴールを見つけ、そこに向かおうとすると、必ずそれを邪魔する存在が現れます。それが 「ドリームキラー」 です。
「君には無理だ」「リスクが大きすぎる」
彼らは善意の仮面をかぶり、あなたの夢を壊しにかかります。なぜなら、あなたがコンフォートゾーンを移動すると、彼ら自身のコンフォートゾーンが乱されて不快に感じるからです。あなたを元の場所に引き戻すことで、自分たちの心の安定を保とうとするのです。
ドリームキラーへの最大の対策は、「プロのコーチ以外には、自分のゴールを絶対に話さない」 ことです。もし漏れてしまったら、「はいはい」と聞き流し、心の中には入れないようにしましょう。他人から「変な人」と言われるようになったら、それはあなたが常識という洗脳から抜け出し、自分だけのゴールに向かっている証拠。むしろ、最高の褒め言葉だと受け取りましょう。
成功者の脳内OSをインストールする技術
ゴールを設定し、コンフォートゾーンを未来にずらす。そのプロセスを加速させるための具体的なテクニックが「アファメーション」です。
アファメーションで「ブリーフシステム」を書き換える
アファメーションとは、「あるルールに基づいて作った言葉を、自分自身に語りかけること」 です。これにより、私たちの無意識の行動や判断を決定している「ブリーフシステム(信念体系)」を書き換えることができます。
「自分は能力のない人間だ」というブリーフシステムを持っている人は、無意識に能力のない人間として振る舞ってしまいます。これを、アファメーションによって「自分は能力のある人間だ」と書き換えるのです。
アファメーションには11のルールがありますが、特に重要なのは以下の点です。
- 一人称で、肯定的な表現を使う: 「私は~」で始め、「~なりたい」ではなく「~でない」も使わない。
- 「達成している」と断定し、現在進行形にする: 「私は年収1億円を稼いでいる」「私はプライベートジェットで世界を飛び回っている」のように、すでにゴールを達成しているかのように記述する。
- 情動を表す言葉を使う: ゴールを達成した時の「嬉しい」「楽しい」「誇らしい」といった感情をリアルにイメージし、言葉にする。
- 秘密にする: ドリームキラーを避けるため、コーチ以外には見せない。
このアファメーションを毎日、特にリラックスしている就寝前に行うことで、あなたのセルフイメージは着実に向上し、ゴール達成が現実のものとなっていきます。
思考の「抽象度」を高め、常識の壁を突破する
著者が本書で繰り返し強調するのが「抽象度」という概念です。これは、物事をどれだけ高い視点から俯瞰して見られるか、という物差しです。
例えば、「犬」という集合より「哺乳類」が、「哺乳類」より「動物」が、より抽象度の高い概念です。「自分」より「家族」、「家族」より「社会」、「社会」より「世界」と、抽象度を上げることで、より多くの人や物事を包含する視点を持つことができます。
ゴールの抽象度が高ければ高いほど、多くの人を幸せにすることができ、ゴール実現へのエネルギーも強力になります。個人的な成功だけでなく、「貧困と差別のない世界を実現する」といった、より抽象度の高いゴールを掲げることで、あなたの器は大きくなり、これまで見えなかった解決策やチャンスが見えてくるのです。
普段から物事を見るときに、一つ上の抽象度で認識する癖をつけること。これが、あなたの思考の枠を広げ、人生の可能性を無限に広げるトレーニングになります。
お金と自由を手に入れる超一流の思考法
本書では、ビジネスパーソンが特に関心を寄せる「お金」についても、その本質が鋭くえぐり出されています。
「お金がない」という恐怖こそが最大の洗脳
私たちは「お金がないと生きていけない」という恐怖に縛られています。しかし著者は、これは飢餓の時代の古い記憶と、経済支配者による 「経済洗脳」 の結果に過ぎないと断言します。
現代の日本では、生活保護制度もあり、本質的な意味で餓死することはありません。にもかかわらず、私たちは「お金がなければ不幸になる」という幻想によって、消費経済の奴隷となり、お金を稼ぐためにhave to
の仕事を続けているのです。
この洗脳から逃れるには、「お金には絶対的な価値はない」「お金がなくても死なない」 という事実を徹底的に理解する必要があります。お金は、あなたのwant to
を実現するための単なる手段であり、目的にしてはいけません。
1億円が切実に必要になれば、1億円は集まる
「1億円欲しい」と漠然と考えても、お金は手に入りません。脳は、自分に必要のない情報をスコトーマ(心理的盲点)にしてしまうからです。
重要なのは、「何のために、その金額が必要なのか」という強力なニーズを脳に知らせることです。使い道が明確で、それがどうしても必要だという切実な理由があれば、脳のフィルター(RAS)が変わり、1億円を稼ぐための情報が次々と目に入るようになります。
具体的な方法として、著者は「1000万円のコンフォート・ゾーンの口座を作る」ことを提案しています。給与口座とは別に、目標額1000万円の貯金用口座を作り、そこに1000万円が貯まっている状態を自分のコンフォート・ゾーンにするのです。すると、残高が1000万円に満たない状態が不快になり、脳が無意識にその差額を埋めるための行動(節約、副業など)を促し始めます。
私たちが目指すべき、本当のゴールとは?
本書の最終章で、著者はこれまでの議論をさらに高い次元へと引き上げ、私たちが真に目指すべきゴールを提示します。
最終ゴールは「自由意志」の獲得
人類史上の偉大な発見は「火」「計算機」そして「自由意志」であると著者は言います。これまでの宇宙観は、すべてがビッグバンから始まる因果律で決められているという「決定論」でした。そこには自由意志の入り込む余地はありません。
しかし、認知科学が明らかにしたように、私たちの世界は情報でできており、時間は未来から過去へも流れます。私たちは、抽象度の高い情報空間にアクセスすることで、過去に縛られず、未来を自由に選択する「自由意志」を行使できるのです。
この自由意志を獲得し、あらゆる洗脳から解放され、自分自身を、そして世界をより良い方向へ書き換えていくこと。これこそが、私たちが目指すべき究極のゴールなのです。
終わりなきゴールに向かって
興味深いことに、ゴールを達成した人の平均余命は短いというデータがあります。ゴールを達成した瞬間、脳は未来に向かうエネルギーを失ってしまうからです。スティーブ・ジョブズが若くして亡くなったのも、イノベーションという彼のゴールが達成されてしまったからではないか、と著者は推測します。
では、どうすればいいのか。
答えは、「ゴールを達成しそうになったら、次の新しいゴールを設定する」 ことです。
コーチングの真の使命は、クライアントをゴールに向かわせると同時に、絶対にゴールを達成させないこと。ゴールは常に蜃気楼のように、先へ先へと動かし続けるのです。
ゴールのない人生は味気ない。しかし、一つのゴールに安住すれば、そこで成長は止まってしまう。
絶えずゴールを更新し続け、終わりなき旅路を歩むこと。それこそが、私たちが生き生きと、毎日を幸せに生きていくための究極の秘訣なのです。
本書を手に取ったあなたは、すでに「変わりたい」というwant to
の第一歩を踏み出しています。次は、あなただけの「現状の外のゴール」を設定し、脳と無意識を味方につけて、最高の未来をその手で掴み取ってください。