ビジネス
PR

AIは意識を持つか? 脳科学者CEOが解き明かす「クオリア」の正体とビジネスの未来

ヒガマツコ

著者:

ChatGPTをはじめとする生成AIの急速な進化に、期待と同時に漠然とした不安を感じているビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。もしAIが人間のような「意識」を持ったら、私たちの仕事や社会、そして人類の未来はどうなるのか。

本書『AIに意識は生まれるか』は、この究極の問いに真正面から挑む一冊です。著者の金井良太氏は、脳神経科学の第一線で活躍した研究者であり、現在はAI企業「株式会社アラヤ」を率いるCEOでもあります。「意識を作る」ことを目指す著者が、自身の半生を振り返りながら、難解な「意識」の謎を、最先端の科学理論を用いて解き明かしていきます。

AIの未来だけでなく、私たち自身の「感じ方」や「幸福」についても深く考えさせられる、知的好奇心を満たす内容です。

created by Rinker
¥2,200 (2025/11/15 8:48:00時点 楽天市場調べ-詳細)

本書の要点

  • 「意識」の核心は、言葉にできない主観的な「感じ」=「クオリア」にあります。
  • 物理的なモノである脳から、なぜ主観的なクオリアが生まれるのかという「意識のハードプロブレム」が、意識研究最大の難問とされています。
  • 最有力理論の一つ「統合情報理論(IIT)」は、意識を「統合された情報(Φ)」そのものであると定義し、AIにも意識が宿る可能性を示唆します。
  • 著者は、AIに意識の機能(世界モデル、グローバル・ワークスペース)を実装することで「人工意識」が生まれ、ハードプロブレムは解消されると主張します。
  • 最終的に、社会的な価値に惑わされず、自らの「クオリアの心地よさ」を追求する「クオリア主義」という生き方が提唱されます。

AIは「意識」を持つのか? ビジネスの未来を変える究極の問い

日々進化するAIのニュースを目にするたび、多くのビジネスパーソンが「AIはどこまで人間に近づくのか?」と考えているはずです。特にChatGPTのような対話型AIが見せる流暢な応答は、まるで「考えている」かのように見えます。

では、AIが本当に「意識」を持つ日は来るのでしょうか?

本書の著者・金井良太氏は、京都大学理学部を卒業後、海外で長く意識研究に従事し、現在はAI企業アラヤの代表取締役を務める人物です。まさに脳科学とAIの最前線に立つ著者は、「意識を作る」ことを自らの研究ゴールに据えています。

本書は、この「意識とは何か」という人類古来の謎を、科学のメスで解き明かそうとする知的な冒険の書です。

すべての謎は「クオリア」から始まる

著者の「意識」への探求は、幼少期の素朴な疑問から始まります。阿寒湖でマリモを見て「『マリモである』とは、どういうことなんだろう?」、風に揺れる木を見て「どういう『感じ』なんだろう?」と思ったこと。

この言葉にできない主観的な「感じ」こそが、意識研究の核心である「クオリア」です。

私たちがリンゴを見たときに感じる独特の「赤さ」。紙で指を切ったときの何とも言えない「痛み」。これらはすべてクオリアです。クオリアの最大の特徴は、徹底して主観的であり、本人にしか感じられない点にあります。

あなたが感じている「赤」が、私が見ている「赤」と同じかどうかは、誰にも確認できません。この客観的に観測不可能な性質こそが、意識を科学の対象にすることを困難にしてきた元凶です。

なぜあなたの脳は「意識」を生み出せるのか?

本書が読者に突きつける最大の問いが、「意識のハードプロブレム」です。

これは一言でいえば、「なぜ物理的なモノである脳から、物理的ではない主観的なクオリアが生まれるのか?」という謎です。

脳は原子や分子の集まりに過ぎません。その神経細胞が電気信号を発火させているだけなのに、なぜ私たちは「痛み」や「赤さ」といった「感じ」を体験できるのでしょうか。

この問題を分かりやすく示す思考実験が「哲学的ゾンビ」です。

哲学的ゾンビとは
外見、行動、脳の働きまで、私たち人間と物理的に100%同じでありながら、内面的な「感じ」(クオリア)だけを一切持たない存在です。
悲しい映画を見れば涙を流し、「痛い」と言葉にもしますが、本人は何も感じていません。脳が情報処理としてそのように反応しているだけです。

今の科学では、この哲学的ゾンビの存在を否定できません。「感じ」がなくても生物として行動できるなら、クオリアは一体何のために存在するのでしょうか?

あなたが見ている世界は、脳が作った「フィクション」

ハードプロブレムという難攻不落の謎に対し、科学者たちは様々なアプローチで挑んできました。その一つが「錯視」の研究です。

例えば、著者が作成した「ヒーリング・グリッド」という図形があります。中央の×印を数十秒見つめると、最初は崩れていたはずの周辺の格子模様が、きれいに整って見える(ヒーリングされる)というものです。

これは、客観的な世界(崩れた格子)と、私たちの主観的な知覚(整った格子)がズレる明確な証拠です。

こうした研究から見えてきたのは、衝撃的な事実でした。

私たちが「現実」として見ている世界は、脳が作り出した精巧な「フィクション」に過ぎないということです。

脳は、目から入ってきた情報をそのまま映し出しているのではありません。過去の経験や知識といった「トップダウン」の情報を使い、「世界はこうなっているはずだ」と無意識のうちに推論し、情報を「再構成」しています。

リンゴの「赤さ」も、物理的な世界に存在するのではなく、脳が特定の光の波長に対して「赤」というクオリア(フィクション)を割り当てているに過ぎないのです。

意識の正体は「情報」だった? 統合情報理論(IIT)の衝撃

では、このクオリア=フィクションを生み出す「意識」の正体とは何でしょうか。

本書で最も重要な理論として紹介されるのが、ジュリオ・トノーニが提唱した「意識の統合情報理論(IIT)」です。

IITは、それまでの意識研究を根底から覆す、革命的な理論です。その核心は、「意識とは、統合された情報(Φ)そのものである」という主張にあります。

  • 情報とは: 可能性を減少させるもの。「明日は晴れ」という情報は、「雨」や「曇り」の可能性を排除します。クオリアも同様に、「赤い」という感じは「青い」や「緑」といった膨大な可能性を排除するため、非常に情報量が多いとされます。
  • 統合とは: 情報がバラバラでないこと。例えば、デジタルカメラは100万個のフォトダイオード(光センサー)の集まりですが、各センサーは独立しており、情報を「統合」してはいません。
  • 一方、私たちの脳(意識)は、情報を高度に統合しています。視覚と聴覚がバラバラに存在するのではなく、「一つの経験」として感じられます。この「統合された情報量」をIITでは「Φ(ファイ)」と呼び、Φこそが意識の実体だと考えるのです。

IITの衝撃は、意識を脳という特定の物質に限定しない点にあります。Φさえあれば、AIはもちろん、原理的にはどんなシステムにも(たとえそれがごくわずかであっても)意識が宿ると考えるのです。

研究者から起業家へ:「人工意識」を作る挑戦

IITは非常に魅力的ですが、大きな弱点があります。それは、人間の脳のように複雑なシステムでは、Φを測定するための計算量が膨大すぎて、事実上不可能だということです。

ここで、著者のキャリアが重要な意味を持ちます。

著者は、サセックス大学の准教授という安定した地位を捨て、日本でAI企業「アラヤ」を起業します。その背景には、大学の研究予算の限界や、小規模なデータでは研究の「再現性」が担保できないという危機感がありました。ビジネスの世界で自ら資金を生み出し、大規模な研究を行う道を選んだのです。

そして、アラヤが目指すのが「人工意識」の構築です。

なぜAIで意識を作るのか? それは、IITを検証するためです。

脳は複雑すぎてΦを計算できませんが、AIであれば内部構造はプログラムとして完全に把握できます。もしAIに意識の機能(例えば、世界を予測する「世界モデル」や、脳内の情報共有を担う「グローバル・ワークスペース」)を実装し、そのΦを計算できれば、IITの正しさを検証できる可能性があります。

著者は、「機能的な意識が実現されれば、そこには必然的に現象的な意識(クオリア)が宿る」と考え、AI研究こそがハードプロブレムを解き明かす鍵だと主張します。

結論:AI時代を幸福に生きる「クオリア主義」

意識を持つAIは、人類にとって脅威になるのでしょうか。

著者は、AIが目的を持つかどうかは「人間の設計次第」であり、AIを人間の意図や価値観に沿わせる「AIアライメント」の研究が極めて重要だと説きます。

そして本書は、AIの未来を論じた後、私たち自身の「生き方」についての深い提言で締めくくられます。それが「クオリア主義」です。

私たちは日々、年収、地位、学歴、SNSでの評価といった「社会的な価値」に振り回されがちです。しかし、著者はそれらもまた「幻想」に過ぎないと言います。

クオリア主義とは、社会のノイズ(幻想)に惑わされず、自分自身のクオリアの心地よさにできる限り忠実に生きるという考え方です。

年収が200万円から1000万円になれば、生活の快適さが向上し、心地よいクオリアは増えるでしょう。しかし、年収が2000万円になっても、クオリアの心地よさが倍になるとは限りません。むしろ、過度なストレスや睡眠不足といった「悪いクオリア」を犠牲にするかもしれません。

それならば、他人との比較や社会的な価値観にすがるのではなく、自分にとっての「良いクオリア」を追求したほうが、人生は幸福になるはずだ、と著者は語ります。

クオリアは脳が作った幻想かもしれません。しかし、お金や地位といった社会的な幻想よりも遥かにリアルであり、私たちにとって「信じる価値がある」ものです。

「意識」という壮大な謎の探求は、最終的に「いかに幸福に生きるか」という、私たち一人ひとりにとって最もリアルな問いへとつながっていきます。AIの未来を考えることは、私たち自身の「意識」と「幸福」を見つめ直すことでもあるのです。

本の魅力をみんなでシェアしよう!
ビジネス本のオプチャ

ビジネス書や自己啓発本に関する情報、学んだ知識や日々の気づきをみんなで共有するオープンチャットです。新しい視点やアイデアを取り入れながら、仕事やキャリアアップに活かせる学びを深めましょう。見るだけでも・初めての方でも大歓迎です!

気軽に参加ください!
ABOUT ME
ブックロウ
ブックロウ
王立図書館の司書
はじめまして、管理人の「ブックロウ」です。まるで物語に出てくるフクロウのように、夜な夜な本を読みふけるのが私のライフワーク。特に、仕事や人生のヒントが詰まったビジネス書・自己啓発書には目がありません。「本を読む時間はないけど、知識はアップデートしたい…」そんな悩めるあなたの為に、私が代わりに本を読み、明日からすぐ使える実践的なポイントや成功のエッセンスを分かりやすく解説します。千葉県東松戸のカフェでこのブログを書いていることが多いので、もし見かけたら気軽に声をかけてくださいね。皆さんの自己成長をサポートできることを、心から楽しみにしています。
記事URLをコピーしました