『億までの人 億からの人』から学ぶ、ゴールドマン・サックス式「富裕層マインド」7つの習慣

本書『億までの人 億からの人』は、ゴールドマン・サックスに17年間勤務し、投資部門のトップまで務めた田中渓氏が、数多くの富裕層との交流から学んだ「富裕層のマインドセット」を解説した一冊です。
本書は特定の銘柄を推奨するような投資術の本ではなく、 富裕層の思考法や哲学、習慣を学び、読者自身のマインドを「億を超える人」へとシフトさせること を目的としています。
著者によれば、多くの富裕層は特別な才能や環境に恵まれたわけではなく、「誰でもできる当たり前のこと」を「圧倒的にやり切る」普通の人々です。 本記事では、本書の中から特に忙しいビジネスパーソンが明日から実践できる「富裕層のマインドセット」を、具体的なエピソードを交えながら詳しく解説していきます。
本書の要点
- 富裕層は特別な存在ではない。当たり前のことを「圧倒的に」「継続して」実行する「普通の人」である。
- 「給与以外の収入ゼロ」はハイリスク。富裕層は全員が投資によって「お金にお金を稼がせて」おり、お金を眠らせておくことを最大のリスクと捉えている。
- 意思決定を他人に委ねない。富裕層はどんな場面でも自分で意思決定を行い、その際、「確実性」よりも「スピード感」を圧倒的に重視する。
- 「投資」か「消費」かを明確に区別する。お金や時間の使い方を常に意識し、自己成長や人脈形成など、将来のリターンが見込める「投資」にリソースを集中させる。
- 「習慣化」は最強の武器である。学習、運動、生活リズムなど、目標達成に必要な行動を仕組み化して継続することが、凡人を非凡な存在に変える。
「億までの人」と「億からの人」を隔てる決定的な違いとは?
「年収1億円」または「純資産5億円」以上。本書が定義する「億を超える人」は、決して遠い世界の住人ではありません。著者の田中渓氏は、ゴールドマン・サックスでリーマンショックのどん底から投資部門トップまで上り詰めた経験を持ち、その過程で300人以上の「億円資産家」たちと交流してきました。
彼らとの交流から見えてきたのは、富裕層が生まれつき特別なわけではないという事実です。彼らは、 普通のことを、誰にも真似できないレベルで「圧倒的に」やり続ける ことで、富を築き上げています。
この記事では、そんな彼らの思考の根幹にあるマインドセットを紐解いていきます。
思考法1:「給与以外の収入はゼロ」はハイリスクだと知る
多くのビジネスパーソンにとって「収入は給与のみ」という状態は当たり前かもしれません。しかし、富裕層の視点では、これは 極めてハイリスクな状態 です。
会社の業績悪化や自身の健康問題で働けなくなれば、収入は即座にゼロになります。 また、インフレが進めば、銀行に預けている日本円の価値は相対的に目減りしていきます。
著者は、「お金を運用しないことは、無数にある選択肢の中から、あえて100%『日本円』に全力投資しているのと同じ」と指摘します。
富裕層で、お金を運用していない人は一人もいません。彼らは「お金にお金を稼がせること」、つまり投資をしないことこそが最大のリスクだと知っているのです。
思考法2:億を目指さなければ、億は手に入らない
「想像できないことは実現できない」。ウォルト・ディズニーのこの言葉は、資産形成においても真理です。
年収1,000万円を目指す人は、1億円を手にすることはありません。なぜなら、 目標を「億」に設定して初めて、「どうすれば達成できるか?」という具体的な思考と行動が始まる からです。
著者がいた投資業界では、まず「年収1億円」というゴールを設定し、そこから逆算して「会社にもたらすべき利益」を計算し、日々の行動に落とし込むのが当たり前でした。
目標を大きく持ち、そこへ向かうための想像力を働かせ、確実に行動に移す。これが「億からの人」になるための第一歩です。
思考法3:「お金が貯まったら投資」では一生富裕層になれない
「お金が貯まったら投資を始めよう」と考えているうちは、富裕層への道は開けません。富裕層は、お金が貯まるのを待つのではなく、 自ら資金調達をしてでも、早くから実践を通じてお金を増やそうとします。「お金はマーケットでつくる」というマインドです。
もちろん、いきなり大きな借金をしてハイリスクな投資を推奨しているわけではありません。著者が示す「超王道」のプロセスは以下の通りです。
- 現在の仕事で安定した収入(フロー)を確保する。
- その中から投資に回す金額を決め、運用を始める。
- 必要であれば借入も活用し、レバレッジをかけて資金を増やしていく。
重要なのは、 投資は待つものではなく、今すぐ始めるもの という意識改革です。
富裕層だけが知っている「お金の哲学」
富裕層は、お金に対して独自の哲学を持っています。それは、単にお金を増やす技術だけでなく、お金とどう向き合い、どう活用していくかという根本的な姿勢に関わるものです。
哲学1:資産を増やすサイクル「お金→経験値→人脈」
原資がゼロの状態から億を目指すには、3つの要素を正しい順番で循環させることが重要だと著者は説きます。その順番とは、 「お金」→「経験値」→「人脈」 です。
- お金:まずは1,000円でも1万円でもいいので、とにかく投資を始めてみること。少額でも「原資を使って投資する」という経験は、1億円を2億円に増やすスキルと同じ本質を持っています。
- 経験値:少額投資を始めると、関連情報に敏感になる「カラーバス効果」が働き、自然と金融マーケットの動向を追うようになります。 成功も失敗もすべてが貴重な経験値となり、投資の相場観が養われます。
- 人脈:投資の経験を発信していると、同じ興味を持つ人々が集まり、コミュニティが形成されます。そこでの情報交換が、やがて質の高い情報をもたらす「人脈」へと発展します。
このサイクルを回し続けることで、富は雪だるま式に増えていきます。最も危険なのは、この順番を逆にすること。経験も資金もないのに、いきなりセミナーなどで人脈を作ろうとすると、詐欺的な話に騙されるリスクが高まります。
哲学2:金融リテラシーがなければ、2,000万円のマンションは1億円で売れない
金融リテラシーの有無は、資産に天と地ほどの差を生みます。著者は自身の経験として、 2,000万円で購入した中古マンションを1億円で売却した 話を挙げています。
ある日、自宅ポストに「2,800万円で買います」という不動産業者からの手紙が入っていました。著者はこれをすぐには信用せず、周辺で地上げが進行していることを突き止めます。業者の狙いを見抜いた著者は交渉を重ね、最終的に自分が有利な立場で「1億円以下では売らない」と伝え、取引を成立させました。
この話からわかるのは、ただ目の前の利益に飛びつくのではなく、 「これは誰が儲けるビジネスモデルなのか?」を常に考え、物事の裏側にある構造を理解する ことの重要性です。 金融リテラシーがあれば、不当な取引を避け、フェアな価値を見極める力が身につきます。
お金がお金を生む「富裕層のお金の使い方」
富裕層のお金の使い方は、単なる消費活動ではありません。すべての支出が、将来の富を築くための「投資」という視点で貫かれています。
使い方1:「投資」か「消費」かを常に自問する
富裕層は、お金を使う際にその出費が「投資」なのか、単なる「消費」なのかを明確に線引きしています。
例えば、ホリエモンとカウンターで寿司を食べる15万円のイベント。これを単なる高い食事と捉えれば「消費」です。しかし、 「彼の知見に触れ、自分の事業アイデアをぶつけてフィードバックを得るための機会」と捉えれば、それは15万円以上の価値を生む「投資」になり得ます。
後輩にご馳走するのは、将来自分を助けてくれるかもしれない後輩への「投資」。一流レストランでの食事は、一流のサービスや感性に触れるための「投資」。すべての支出に対して「これは将来の自分に何をもたらすのか?」と問いかける習慣が、お金の使い方を研ぎ澄ましていきます。
使い方2:フェラーリを買う本当の理由
「お金持ちになったらフェラーリに乗りたい」と考える人は多いかもしれません。しかし、富裕層がフェラーリを選ぶ理由は、単なる見栄や物欲ではありません。
彼らは、フェラーリを2つの側面から「投資対象」として見ています。
- 資産価値:フェラーリは生産台数が厳しく管理されており、希少価値から年月を経ても価値が落ちにくく、むしろ上がる可能性がある。
- コミュニティ価値:フェラーリのオーナーズクラブに参加することで、普段は出会えないようなレベルの高い人々とつながり、新たなビジネスチャンスや人脈を得られる。
このように、彼らは不動産も車も、そのものの価値だけでなく、 それが生み出す付加価値(将来の利益や人脈)を見極めてお金を使っている のです。
とんでもなく稼ぐ人の「時間の使い方」
「時間は誰にでも平等に与えられた唯一の資源である」。この言葉の重みを、富裕層ほど深く理解している人はいません。彼らにとって、時間の使い方を間違えることは最大のリスクなのです。
時間術1:「習慣化」は最強の武器と考える
著者は、「何かひとつのことを『習慣化』できる力は、一生の武器になる」と断言します。 そして、富裕層の多くが、その人なりのルーティンを確立し、それを絶対に変えません。
著者自身も、365日毎朝3時45分に起床し、「25km走る」「60km自転車に乗る」「7,000m泳ぐ」のいずれかをこなす生活を6年以上続けています。
なぜ、そこまで習慣化にこだわるのか。それは、 日々の小さな決断を減らし、重要な意思決定に最大限のエネルギーを注ぐため です。スティーブ・ジョブズが毎日同じ服を着ていたのと同じ理由です。
習慣化を成功させるコツは、 「意思の力に頼らず、行動せざるを得ない仕組みをつくること」。 例えば、著者は翌朝のランニングウェア一式を寝る前に完璧に準備しておくことで、「どの服を着ようか」と考える隙すら脳に与えないようにしているそうです。
時間術2:「緊急性が低くて重要性が高いこと」に時間をかける
多くの人は、目の前の「緊急性が高くて重要性も高い」タスクに追われがちです。しかし、富裕層が最も時間を投資するのは 「緊急性は低いが、重要性は高い」 領域です。
具体的には、金融リテラシーの学習、語学の習得、起業の準備、健康維持のための運動など、 すぐに成果は出ないものの、中長期的に人生を豊かにする活動 のことです。
この領域にどれだけ時間を割けるかが、人生の豊かさを決定づけます。そのためには、「緊急性は高いが、重要性は低い」こと(中身のない飲み会やSNSの通知など)に使う時間を意識的に削り、自己投資の時間に振り向ける戦略的な視点が必要です。
億を稼ぐ人の「生活習慣」と「人間関係」
富裕層のマインドは、日々の生活習慣や人との関わり方にまで浸透しています。彼らは、心身のコンディションを整え、良質な人間関係を築くことが、結果的に富を生み出すことを知っています。
習慣1:「カネ→カラダ→ココロ」の順番で整える
メンタルの不調を感じたとき、多くの人は心の問題に直接アプローチしようとします。しかし著者は、 「カネ→カラダ→ココロ」の順番で整える ことを推奨しています。
まず、資産運用や時間の使い方を見直し、経済的な不安、つまり「カネ」の問題を解消して心の土台を安定させる。次に、運動や食事、睡眠を通じて「カラダ」のコンディションを整える。そうすることで、心の問題は自然と解決に向かうことが多いのです。
特に 運動 は、心身の健康に絶大な効果をもたらします。著者は、激務で心身ともにボロボロになった時期に運動を習慣化したことで、ストレスが軽減し、仕事のパフォーマンスも向上したと語ります。
習慣2:「信頼貯金」を地道に増やす
人間関係において、富裕層が最も大切にしているのが「信頼」です。そして、その信頼は、日々の地道な行動によって「貯金」のように積み上げられるものだと考えています。
著者はゴールドマン・サックス時代、誰に頼まれるでもなく、 会議のたびに独自の分析を加えた議事録を作成したり、上司のために訪問先の情報を1枚紙にまとめたり といったことを続けていました。
冒険家の植村直己氏が、泊めてもらった家のトイレ掃除を欠かさなかったというエピソードも、この「信頼貯金」の本質を表しています。
誰でもできるけれど、誰もが進んではやらない、小さな気遣いや貢献。それを当たり前に続けることが、やがて大きな信頼となり、お金では買えない価値を生むのです。
人間関係術:時間とエネルギーを奪う人とは付き合わない
良質な人脈を広げることと同じくらい、富裕層が徹底しているのが 「時間とエネルギーを奪うだけの人との付き合いをやめること」 です。
- 約束を守らない人
- 嘘をつく人
- ゴシップや愚痴、批判ばかりの人
- 人の話を一方的に遮る人
こうした人々との時間は、百害あって一利なし。お金は増やせても、時間とエネルギーは有限です。その貴重なリソースを守るために、人付き合いにも定期的な棚卸しが必要です。
まとめ:あなたも今日から「億からの人」へ
本書『億までの人 億からの人』が示す道は、決して特別な才能を持つ人だけのものではありません。
「給与以外の収入源を持つことの重要性を理解し、今すぐ少額からでも投資を始める」
「時間の使い方を見直し、自己投資のための習慣を仕組み化する」
「すべての支出を『投資』か『消費』かで見極める」
「誰にでもできる小さな信頼を、地道に積み重ねる」
これらはすべて、今日からでも意識し、行動に移せることです。
経営コンサルタントの大前研一氏は、「人間が変わる方法は3つしかない。『時間配分』を変える。『住む場所』を変える。『付き合う人』を変える」と述べました。著者はこれに4つ目として 「習慣化」 を加えています。
行動が変わり、習慣が変われば、人格が変わり、運命が変わる。 本書で紹介された富裕層のマインドセットを一つでも実践し、それを「習慣」にできたとき、あなたの人生は間違いなく「億からの人」へと向かい始めるでしょう。