心理・脳科学
PR

「なぜか不安」なビジネスパーソン必読。『無(最高の状態)』に学ぶ、脳科学が解き明かす「苦しみ」の正体と最強の対処法

ヒガマツコ

著者:

仕事のプレッシャーや人間関係で「なぜかいつも疲れている」「漠然とした不安が消えない」…そんな悩みを抱えるビジネスパーソンは多いでしょう。本書『無(最高の状態)』は、その苦しみの正体があなたの脳が生み出す「自己」と「物語」にあると科学的に解き明かします。この記事では、そのメカニズムと、不安を手放し「最高の状態」を取り戻すための具体的な実践法を解説します。

created by Rinker
¥1,540 (2025/11/02 10:57:46時点 Amazon調べ-詳細)

本書の要点

  • 人間の脳は「ネガティビティバイアス」を持ち、生まれつきネガティブな情報を記憶しやすい。
  • あらゆる「苦しみ」の根源は、過去や未来を憂う「自己(わたし)」という感覚と、脳が自動生成する「物語」にある。
  • 苦しみは「痛み × 抵抗」で生まれる。現実の痛みに「抵抗」せず「降伏」することが苦しみを減らす鍵である。
  • 「結界」を張り(心身の安全を確保し)、「悪法」(自分を縛る歪んだ物語)を自覚し、「降伏」するスキルを身につける。
  • 「停止」(思考を止める)と「観察」(思考を眺める)の訓練により、自己を解体し、幸福度や意思決定力が高まる「無我」の状態に至る。

なぜあなたの心配事の97%は起こらないのに、不安は消えないのか?

「今週のプレゼン、失敗したらどうしよう」
「あのクライアント、怒らせてないだろうか」
「将来のキャリア、このままで大丈夫か…」

多忙なビジネスパーソンであれば、こうした不安や心配が頭をよぎらない日はないかもしれません。

しかし、こんな研究結果をご存じでしょうか。ワイルコーネル医科大学の研究によれば、私たちが抱く心配事の実に97%は、実際には起こらないか、予想より良い結果に終わるというのです。

それなのに、なぜ私たちの不安は消えないのでしょうか?

事実、厚生労働省の統計では、現代の日本で働く人の58%以上が「強いストレスを感じている」と回答しています。心配事の大半が取り越し苦労であるにもかかわらず、私たちは「生きづらさ」から解放されません。

本書『無(最高の状態)』は、この根深い問題に対し、神経科学や生物学の最新知見を基に「苦しみとは何か?」という根本的な問いにメスを入れます。

この記事では、本書のエッセンスを抽出し、なぜ私たちが不安やストレスに悩まされるのか、そしてどうすればその呪縛から逃れ、生まれ持つポテンシャルを最大限に発揮できる「最高の状態」になれるのかを解説します。

苦しみの正体①:人間の脳は「ネガティブ」が標準設定

仏教の開祖であるブッダは「人生は苦である」と説きました。これは「人生は不幸だ」という意味ではなく、「生きづらさは人間のデフォルト設定だ」という意味合いです。

この考えは、現代科学でも裏付けられています。

ネガティビティバイアス

人間の脳には「ネガティビティバイアス」が備わっています。これは、ポジティブな情報よりもネガティブな情報の影響を受けやすく、マイナスなことほど強く記憶に残るという心理特性です。

例えば、あなたが「100万円のボーナスをもらった日」に「愛車が壊れて100万円の修理代がかかった」とします。1ヶ月後、あなたの頭を悩ませているのは、ボーナスの喜びではなく、修理代の苦い記憶である可能性が高いでしょう。

快楽の踏み車

さらに悪いことに、人間には「ポジティブな情報ほど長持ちしない」という心理も備わっています。これを「快楽の踏み車」と呼びます。

宝くじで数億円が当たった人の幸福度を追跡した古典的な研究でも、当選直後は幸福度が上がるものの、半年後にはほぼ全員が元の精神状態に戻っていたといいます。昇進の喜びも、新しい車を手に入れた満足感も、やがて色褪せてしまうのです。

幸せはすぐに消え去るのに、苦しみは数倍の強さで残り続ける。これが、私たちの脳の標準設定です。

なぜこんな面倒な仕様になっているのか? それは、人類の祖先が暮らした原始の環境では、危険に敏感で臆病な個体ほど生存確率が高かったからです。ライオンの脅威(ネガティブ情報)は、美味しい木の実のありか(ポジティブ情報)よりも、遥かに重要でした。

この原始時代の生存戦略が、安全になった現代社会ではうまく機能せず、孤独感、鬱、完璧主義といった「現代病」として私たちの心に機能不全を起こしているのです。

苦しみの正体②:すべての悩みの元凶は「自己」と「物語」

同じ哺乳類でも、ヒト以外の動物は苦しみを「こじらせ」ません。

京都大学の霊長類研究所にいたチンパンジーのレオは、脊髄炎で半身不随の重体に陥りました。人間なら絶望してもおかしくない状況です。しかし、レオに絶望の様子はなく、ストレスホルモンも正常値を保ち、やがてリハビリで回復しました。

なぜ人間だけが苦しみをこじらせるのか? その答えは「二の矢」にあります。

一の矢と、二の矢

仏教では、避けられない苦難(病気、怪我、他人の理不尽な言動など)を「一の矢」と呼びます。これは誰にでも等しく降りかかります。

しかし人間は、この「一の矢」を受けた直後、自ら「二の矢」を放ちます。
「なぜ自分だけがこんな目に遭うんだ」(怒り)
「もう人生は終わりだ」(絶望)
「きっとあの時、私が悪かったんだ」(自己非難)

この「二の矢」こそが、本来なら数分で消えるはずの怒りや不安を増幅させ、心を長期的に蝕む「苦しみ」の正体です。この「二の矢」を何度も頭の中で繰り返すことを「反芻思考」と呼び、鬱病や不安障害の強い原因となります。

そして、この「二の矢」を放つ中心にいるのが、「自己(わたし)」という感覚です。
「〝私〟がバカにされた」
「〝私〟の将来はどうなる?」
「〝私〟はダメな人間だ」

私たちの苦しみは、常にこの「自己」を起点に、過去の後悔や未来の不安へと広がっていきます。

脳は「物語」製造機

さらに厄介なことに、この「自己」は、脳が自動的に作り出す「物語」によって構成されています。

私たちは現実をありのまま見ているわけではありません。脳は、目や耳から入る情報を処理するより先に、過去の記憶に基づいた「物語(シミュレーション)」を0.1秒で作り出し、それを「現実」として体験しています。

例えば、友人の態度が急にそっけなかった時(一の矢)、あなたの脳は瞬時に物語を探します。
「忙しくて疲れているんだろう」という物語が採用されれば、あなたは「また今度にしよう」と思うだけです。
しかし、もし「私は愛されない人間だからだ」という歪んだ物語(本書でいう〝悪法〟)が採用されれば、「私は何か悪いことをしたのでは…」という「二の矢」が放たれ、苦しみ続けることになります。

メンタルが強い・弱いの問題ではありません。あなたの脳内に、どのような「物語」がインストールされているかの問題なのです。

ステップ1:まずは「結界」を張って安全地帯を確保する

では、どうすればこの「自己」と「物語」の呪縛から逃れられるのでしょうか。

本書では、いきなり自己を解体しようとはしません。なぜなら「自己」は本来、あなたを守るための生存ツールであり、それを手放す作業には恐怖が伴うからです。

まずは「結界」を張り、心と身体に「安心感」を与える土台作りから始めます。これは「セット」(個人の内面状態)と「セッティング」(物理的・社会的環境)を整える作業です。

セットを整える(内面の調整)


  1. 感情の粒度を上げる:
    自分の感情を「ムカつく」「ヤバい」といった大雑把な言葉で片付けていませんか? 脳は曖昧な指示を嫌います。「感情の粒度」が低いと、脳は混乱しストレスを感じ続けます。
    「癇にさわる」「憤る」「いらつく」など、自分の感情に正確なラベルを貼る「感情ラベリング」を行うことで、脳は落ち着きを取り戻します。



  2. 内受容感覚トレーニング:
    自分の心拍、呼吸、筋肉のこわばりなどを正確に察知する能力(内受容感覚)を鍛えます。うつ傾向が強い人ほど、自分の心拍数を正しくカウントできないことが分かっています。
    「心拍数トラッキング」(脈を測らずに心拍数を推測する)や、「スダルシャンクリヤ」(ヨガの特殊な呼吸法)などで、身体内部の感覚を研ぎ澄まします。


セッティングを整える(環境の調整)


  1. 避難所を作る(セーフプレイスワーク):
    脳は現実と想像の区別がつきません。目を閉じ、自分が心から安心できる場所(過去に訪れた場所、想像上の風景など)を五感でリアルに思い描きます。ストレスを感じた時に、この脳内の「避難所」に逃げ込むのです。



  2. グラウンディング:
    私たちの悩みは、意識が「過去」か「未来」に飛んでいる時に生まれます。「54321法」(今、目に見えるものを5つ、触れるものを4つ…と五感で確認する)などで、意識を強制的に「現在」に引き戻します。


ステップ2:あなたを縛る「悪法」の正体を知る

結界で安全地帯を確保したら、いよいよ「自己」と向き合います。
禅の僧・道元は「仏道をならうというは、自己をならうなり。自己をならうというは、自己をわするるなり」という言葉を残しました。

「自己をならう」とは、自分を縛っている歪んだ物語=「悪法」の正体を知ることです。

本書では、人が陥りやすい18の悪法パターンが紹介されています。
* 【欠陥】: 「自分には根本的な問題がある」
* 【無能】: 「私は日常の問題に対処できない」
* 【脆弱】: 「何か悪いことが起こるのではないか」
* 【完璧】: 「完璧を目指さねばならない」
* 【服従】: 「自分の意見を言うべきではない」

こうした悪法は、幼少期の経験や社会の価値観によって、あなたを守るために(皮肉にも)インストールされたものです。

この悪法の正体を突き止めるのが「悪法日誌」です。
ネガティブな感情を抱いた時、その「①トリガー」「②感情」「③思考/イメージ」「④身体反応」を記録します。そして、「⑤背後にある悪法」を推定し、それが「⑧現実的な思考(現実思考)」であるかを検証します。(例:「(悪法)上司に嫌われたに違いない」→「(現実思考)ミスを指摘されただけで、人格を否定されたわけではない」)

ステップ3:現実への「降伏」こそが最強の戦略

悪法の正体が見えてきても、それを力ずくで消そうとしてはいけません。
本書が提示する最強の戦略は「降伏」です。

苦しみのメカニズムは、「苦しみ = 痛み × 抵抗」という式で表されます。

「痛み」(一の矢)は避けられません。しかし、その痛みに対して「こんなはずじゃない」「なぜ私が」と「抵抗」することで、脳は「苦しみ」(二の矢)を生み出します。

アマゾンの奥地で暮らすピダハン族は「世界で最も幸福な部族」と呼ばれます。彼らには鬱や自殺がほとんどありません。彼らの言語には過去や未来の概念すら乏しく、現実をありのまま受け入れる「まっすぐな民」だからです。彼らは、過去や未来を憂う私たち先進国の人間を「ひねくれ頭」と呼びます。

「降伏」とは、諦めや敗北ではありません。
現実を直視し、自分にはコントロールできないこと(権外)と、できること(権内)を冷静に識別する、積極的な態度です。

「降伏ワークシート」を使い、自分の「抵抗反応」(例:頑張りすぎる、酒や刺激に頼る)が本当に問題解決になっているかを分析し、「権内」でできる現実的な対処(降伏行動)を見つけましょう。

ステップ4:「停止」と「観察」で「無我」に至る

いよいよ最終ステップです。「自己」と「物語」から完全に自由になるため、「無我」の境地を目指します。
「無我」とは、あなたを悩ませる脳内の「物語」(専門的にはミー・センター/DMNの活動)を止めることです。そのための訓練が「停止」と「観察」です。

  1. 停止(思考を止める訓練):
    脳のリソースを他のことに使い、物語の製造機能そのものを止めます。

    • 作務(さむ): 禅の修行。皿洗いや掃除など、日常の動作の「感覚」(水の冷たさ、スポンジの感触など)にただ集中します。
    • 止想(しそう): 呼吸の感覚など、意識を一点に集中させます。思考が浮かんでも「また考えた」と自分を責めず、淡々と意識を呼吸に戻します。
  2. 観察(思考を眺める訓練):
    「停止」とは逆に、思考や感情が浮かぶのを妨げず、それを「ただ眺める」訓練です。

    • 観想(かんそう): 意識がさまようままに任せ、「いま『仕事が不安だ』と考えた」と、他人事のようにジャッジせずに観察し続けます。駅のホームから電車(思考)が通り過ぎるのを眺める感覚です。

ただし、これらの修行には注意点もあります。やり方を間違えると、逆に自我が肥大する「禅病」と呼ばれる副作用が起きることも。本書では「縁起性(すべては繋がっていると思う)」「超越性(自然やアートに畏敬の念を抱く)」など、安全に実践するための5つのポイントも紹介されています。

「無我」がもたらすビジネスパーソン最強の状態

「無我」と聞くと、何も感じない「廃人」のようになるイメージがあるかもしれません。
しかし、本書によれば全く逆です。

無我とは、自己(エゴ)の呪縛や歪んだ物語から解放され、あなたが生まれ持つ能力が最大限に発揮される「最高の状態」です。

この状態では「智慧(ちえ)」が向上し、具体的には以下の変化が科学的に報告されています。


  1. 幸福度の上昇:
    ネガティブな感情を生み出すバックボーンが消え、心が安定します。



  2. 意思決定力の向上:
    「〝私〟がどう思われるか」というエゴが消えるため、客観的で合理的な判断が可能になります。失敗のフィードバックも冷静に受け入れ、次に活かせます。



  3. 創造性の上昇:
    「こうあるべきだ」という固定観念(悪法)にとらわれず、好奇心旺盛な「永遠の初心者」として物事を新鮮な目で見られるようになります。



  4. ヒューマニズムの向上:
    「自分」と「他人」を隔てる壁が薄くなり、他者への共感力や寛容さが増します。結果として人間関係も良好になります。


無我とは、あらゆる変化を恐れず受容し、脳内のノイズに振り回されない「圧倒的な自由」を手に入れた状態なのです。

まとめ:苦しみのメカニズムを知り、今日から実践しよう

私たちの苦しみは、性格や意志の弱さのせいではありません。それは、原始時代から受け継いだ脳の「ネガティビティバイアス」と、自動的に作動する「自己」と「物語」というシステムエラーに過ぎません。

本書『無(最高の状態)』は、そのエラーのメカニズムを徹底的に解明し、具体的な対処法を体系的に示してくれます。

  1. 結界を張り、心身の安全地帯を作る。
  2. 悪法の正体を知り、自分が「物語」に縛られていると自覚する。
  3. 降伏のスキルを学び、コントロールできない「痛み」への無駄な「抵抗」をやめる。
  4. 停止観察の訓練で「無我」に至り、最高のパフォーマンスを発揮する。

精神の修養は、一度やれば終わるものではなく、一生続く「悟後の修行」であると著者はいいます。

まずは「皿洗いの間だけ、水の感覚に集中する(作務)」ことからでも構いません。苦しみのメカニズムを知ったあなたは、すでに対処法を手に入れています。今日からその一歩を踏み出し、あなた本来の「最高の状態」を取り戻してみてはいかがでしょうか。

本の魅力をみんなでシェアしよう!
ビジネス本のオプチャ

ビジネス書や自己啓発本に関する情報、学んだ知識や日々の気づきをみんなで共有するオープンチャットです。新しい視点やアイデアを取り入れながら、仕事やキャリアアップに活かせる学びを深めましょう。見るだけでも・初めての方でも大歓迎です!

気軽に参加ください!
ABOUT ME
ブックロウ
ブックロウ
王立図書館の司書
はじめまして、管理人の「ブックロウ」です。まるで物語に出てくるフクロウのように、夜な夜な本を読みふけるのが私のライフワーク。特に、仕事や人生のヒントが詰まったビジネス書・自己啓発書には目がありません。「本を読む時間はないけど、知識はアップデートしたい…」そんな悩めるあなたの為に、私が代わりに本を読み、明日からすぐ使える実践的なポイントや成功のエッセンスを分かりやすく解説します。千葉県東松戸のカフェでこのブログを書いていることが多いので、もし見かけたら気軽に声をかけてくださいね。皆さんの自己成長をサポートできることを、心から楽しみにしています。
記事URLをコピーしました