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仕事に疲れたあなたへ贈る「労働なき世界」|余暇こそが社会を救う?

ヒガマツコ

本書「労働なき世界: 労働だけが罪であり、余暇だけが世界を救う」は、現代社会における「労働」の意味を根底から問い直し、過剰な労働が生み出す弊害を鋭く指摘します。著者は、多くの労働が富を生み出す「経済活動」ではなく、富の分配に影響を与えるだけの「政治活動」に過ぎないと断じ、実力主義や現在の経済システムに疑問を呈します。そして、真の豊かさとは何かを問いかけ、ベーシック・インカム(BI)の導入によって人々が労働から解放され、余暇を追求できる社会こそが、個人と地球全体の幸福につながると主張します。本書は、忙しい日々に追われるビジネスパーソンにこそ、立ち止まって働き方や生き方を見つめ直すきっかけを与えてくれる一冊です。

本書の要点

  • 現代の労働の多くは、富を生み出す「経済活動」ではなく、富の分配に影響を与える「政治活動」である。
  • 「実力主義」は、金銭的な成功を能力の証明とする循環論法であり、本質的な価値を見誤らせる。
  • 人間は本来、他者に貢献したいという「貢献欲」を持っており、金銭的報酬がなくても有意義な活動を行う。
  • ベーシック・インカム(BI)は、貧困、環境問題、格差など多くの社会問題を解決し、人々を労働の苦痛から解放する可能性を秘めている。
  • 「金」は他者を働かせる権力であり、人々が怠惰であるという前提のもとに成り立つシステムだが、BI導入によってその必要性は薄れる。

なぜ私たちは働きすぎるのか? 労働の大半は「政治活動」という衝撃の事実

あなたは毎日、何のために働いていますか? 家族のため、自己実現のため、社会貢献のため…様々な理由があるでしょう。しかし、本書「労働なき世界」は、その労働の多くが、実は社会全体の富を増やすことには貢献していないと指摘します。

著者によれば、労働には大きく分けて2種類あります。一つは、実際にモノやサービスを生み出し、私たちの生活を豊かにする「経済活動」。例えば、農家が野菜を作ったり、職人が製品を作ったり、医療従事者が治療を行ったりすることです。

もう一つが、本書で問題視されている「政治活動」です。これは、既存の富を自分たちの都合の良いように分配するための活動であり、実質的には新たな富を生み出しません。具体例として、著者は企業の営業活動やマーケティング、社内政治、さらには過度な受験戦争などを挙げます。

例えば、ある商品を売るために、企業は莫大な広告費を投じ、営業担当者は日夜奔走します。しかし、その商品が本当に社会にとって必要なものなのか、あるいは単に競争に勝つためだけの活動ではないのか、本書は鋭く問いかけます。実際、本書では人類学者のデヴィッド・グレーバーの著書『ブルシット・ジョブ』を引用し、働く人の37%~40%が自らの仕事を無意味だと感じているという衝撃的なデータも紹介されています。

この「政治活動」に多くの時間とエネルギーが費やされることで、私たちは疲弊し、地球環境にも負荷をかけているのではないか、というのが著者の主張です。パナソニックが家電を作り続けるのは、本当に社会が必要としているからなのか、それとも会社を存続させ、従業員の生活を守るためなのか。この問いは、私たちビジネスパーソンにとっても他人事ではありません。

「頑張れば報われる」は本当? 実力主義という幻想

私たちは、「努力すれば報われる」「実力のある人が成功する」という「実力主義」の考え方をどこかで信じているのではないでしょうか。しかし、本書はこの実力主義もまた、私たちを縛る幻想であると喝破します。

著者は、「金を得ている=実力がある」という考え方は循環論法に過ぎないと指摘します。例えば、巧みな話術で不要な商品を売りつける営業マンや、社内政治を駆使して出世した管理職は、金銭的には成功しているかもしれません。しかし、それが本当に社会にとって価値のある「実力」なのでしょうか?

本書では、高収入を得ている人々が必ずしも社会に富を生み出しているわけではない例を挙げ、むしろ富を生み出すエッセンシャルワーカー(農家、介護士、清掃員など)ほど低賃金である矛盾を指摘します。そして、「女性活躍推進」というスローガンも、結局は「金を稼いでいる女性=活躍している女性」という実力主義の価値観に基づいていると批判します。本当に活躍しているのは、日々家事や育児、地域活動などに勤しむ多くの女性たちではないか、と。

さらに著者は、年功序列の方がむしろ効率的である可能性も示唆します。年功序列であれば、上司に媚びへつらう必要がなくなり、社内政治に費やすエネルギーも削減できるというのです。この主張は賛否両れるかもしれませんが、現在の成果主義や実力主義が本当に私たちを幸福にしているのか、改めて考えるきっかけを与えてくれます。

あなたの「優しさ」はどこへ向かう? 貢献欲とベーシック・インカム

「もしお金の心配がなくなったら、人は働かなくなるのでは?」これは、ベーシック・インカム(BI)の議論で必ず出てくる疑問です。しかし著者は、人間は本来、誰かの役に立ちたい、社会に貢献したいという「貢献欲」を持っていると主張します。

友達とのバーベキューを想像してみてください。誰が肉を焼き、誰が飲み物を準備するかを厳密に管理しなくても、自然と役割分担がなされ、みんなで楽しむことができます。著者は、このように人間は報酬がなくても自発的に意味のある活動を行うと考えます。

しかし、現代社会では、この「貢献欲」が満たされず、多くの人の「優しさ」が行き場を失っていると指摘します。公園で鳩に餌をやる人、アイドルに多額の送金をする人…。彼らは、誰かに優しくしたいという気持ちを、歪んだ形でしか表現できないのかもしれません。

そこで著者が提案するのが、ベーシック・インカム(BI)です。BIとは、政府がすべての人に生活に最低限必要なお金を無条件で支給する制度です。著者は、BIによって人々が生活の不安から解放されれば、嫌な仕事や無意味な労働から離れ、本当にやりたいことや社会貢献活動に時間を使えるようになると主張します。

BIが導入されれば、ブラック企業は淘汰され、人々は精神的な安定を得て、結果的に医療費も削減されるかもしれない。さらには、貧困問題、環境問題、少子化問題までも解決に向かう可能性があると、著者はその壮大な可能性を提示します。もちろん、財源の問題やインフレのリスクも考慮しつつも、それ以上に得られるメリットは大きいと訴えます。

「お金」とは何か? その呪縛からの解放

本書は、私たちが当たり前のように使っている「お金」そのものの意味についても深く考察します。著者によれば、お金とは本質的に「他者を働かせる権力」です。そして、このお金というシステムは、「人は怠惰である」という前提の上に成り立っていると指摘します。

もし人々が自発的に助け合い、社会に必要な活動を行うのであれば、お金という媒介物は必要ないかもしれません。しかし、私たちは「金がなければ生きていけない」という恐怖心から、お金を稼ぐために無意味な労働にも耐え忍んでしまうのです。

著者は、BIの導入によって人々がお金の心配から解放されれば、お金の価値観そのものが変わると予測します。お金は希少なものではなくなり、「他者の働き」の重要性が再認識される。そうなれば、人々は金銭的な報酬のためではなく、純粋な貢献欲や楽しさから活動するようになり、結果として「労働」という概念自体が消滅するかもしれないとまで述べています。

もちろん、これは壮大なビジョンであり、すぐに実現するものではないかもしれません。しかし、お金のために心身をすり減らし、地球環境を破壊するような現代のあり方に疑問を投げかけ、新しい社会の可能性を示唆する本書のメッセージは、非常に示唆に富んでいます。

「労働」を殺し、「余暇」を生きるための第一歩

本書の最終章では、「労働」の定義について改めて触れ、「人が怠惰であることを前提とされたが故に押し付けられた不愉快な営み」こそが撲滅すべき労働であると結論づけます。そして、不愉快でない活動、つまり自発的で創造的な活動こそが「余暇」であり、それこそが人間を幸福にし、社会を豊かにすると主張します。

著者は、読者に対して「労働を嫌悪し、余暇を追求せよ」と強く訴えかけます。それは、単に怠けることを推奨するのではなく、私たち一人ひとりが自分にとって本当に価値のある活動を見つけ、主体的に生きることを促すメッセージです。

この本を読んだからといって、すぐに労働から解放されるわけではありません。しかし、日々の仕事に追われ、何のために働いているのか見失いがちな私たちにとって、本書は「働くこと」そして「生きること」の意味を根本から見つめ直すための、貴重な視点を提供してくれるでしょう。

忙しいビジネスパーソンの方も、一度立ち止まって、この「労働なき世界」という挑発的な書物を手に取ってみてはいかがでしょうか。もしかしたら、あなたの人生観を揺るがすような、新しい発見があるかもしれません。

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管理人
地元・千葉県東松戸に住み、東松戸をこよなく愛するヒガマツコが運営するサイト「ヒガマツBooks」では、ビジネス書や自己啓発書を中心に書籍の要点を効率的に紹介しています。学生時代から読書に親しみ、短時間で要点をつかむスキルを磨いてきました。このブログでは、ビジネスや自己成長に役立つ本の重要なエッセンスを凝縮し、実践的なヒントや成功事例とともにわかりやすく解説。忙しい毎日でも効率よく学べるよう工夫した要約記事を日々更新しています。私のミッションは「本から得られる知識を通じて、より良い人生と成功をサポートすること」。趣味は飲食店巡りと運動で、新たな知識や視点を取り入れるのがモットー。今後は動画やSNSとも連携し、多くの方に読書の楽しさとビジネススキル向上の機会を届けるべく、日々新たな挑戦を続けています。
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